性行為の内容や避妊の手順について、学校ではどこまで教えるべきなのか。ドイツ出身のコラムニスト、サンドラ・ヘフェリン氏は「ドイツの学校では生徒が知りたいことはすべて教える。バッシングを恐れて何も教えない日本の性教育とは大きく異なる」という——。

■日本人は性教育が足りない

日本に長く住む筆者は「日本と外国の文化の違い」についてよく考えます。なかでも最も違うなと思うのが「性のあり方」に関する考え方です。なぜなら日本でタブーなことがドイツでは当たり前だったりするからです。

代表的なものに「性教育」が挙げられます。

先日、ある番組が、緊急避妊薬について「日本で購入するには医者の処方箋が必要であること」、「でも世界の約90カ国では、医者の処方箋がなくても薬局で購入可能であること」を紹介しました。

すると、日本産婦人科医会の前田津紀夫副会長が「(薬局で買えるようになると)『じゃあ、次も使えばいいや』という安易な考えに流れてしまうことを心配している」「日本では若い女性に対する性教育、避妊も含めて、ちゃんと教育してあげられる場があまりにも少ない」とコメントし物議を醸しました。

妊娠は男と女がいて初めて成り立つものなのに、なぜ「若い女性」だけに責任があるかのような言い方をするのか、という批判の意見が多く聞かれたのです。

しかし「日本では避妊も含む性教育が足りない」という点は当たっているなとも思いました。今回は、日本と外国の性教育のあり方とその違いにスポットを当ててみます。

■バッシング、問題視、教員処分……自粛が続くニッポンの教育現場

日本では1972年に日本性教育協会が設立されてから、それまで行われてきた「純潔教育」を見直し、性にまつわる現実的な問題を科学的に解明し子供たちに教育していこう、という動きがありました。

例えばそれまでは思春期の男子の成長について「声変わりがあること」を教えるのにとどめていましたが「精通」についても教えるようになるなどオープンな性教育に向かって歩み始めていました。

ところが今から約20年前の2002年に事態が変わります。東京日野市の七生養護学校(当時)が、知的障害の子供が性被害に遭っても気付くことができなかったことを受け、今後の防止のために、男性器と女性器の名称を織り込んだ歌を歌ったり、生徒に男と女の性器のついている人形を使って性教育を行っていたところ、これがバッシングの対象となってしまいます。

校長会などでは先進的で分かりやすい試みだとして高く評価されていましたが、東京都議員が「行き過ぎた性教育ではないのか」と問題視し、これが騒ぎとなり教師が処分される事態に発展してしまいました。

その約10年後の2013年に結審した裁判では都議側の敗訴が確定しています。ただこの騒動を受け教育界で性教育は「触れてはいけないもの」という扱いになってしまいました。

2018年には東京の足立区立中学校の性教育の授業で「性交」「避妊」という言葉が使われていたことがまたもや都議から問題視され、「性については教育機関であまり詳細に話さないほうがよい」という自粛ムードが今に至るまで続いているようです。

■性教育のスタートは家庭で読む「絵本」から

ドイツは性にオープンなお国柄です。そのため親が子供に読んであげる絵本の中に性教育の本が含まれていることも多いです。たとえば『Vom Liebhaben und Kinderkriegen: Mein erstes Aufklärungsbuch』という絵本では、男女の性行為から出産の絵まで何一つ隠すことなく可愛い絵で描かれています。

思春期になった子供が性や異性に関心を持ち始めると、親が子供にコンドームを持たせることもあります。その際に親が子供を茶化すような雰囲気は必ずしもなく、「品質のために冬はマイナスの気温になる車などにコンドームを置かないこと」「コンドームが破れないために、鍵など尖ったものと一緒にポケットに入れないこと」まで淡々と子供にレクチャーする親もいます。

そうはいっても、ドイツにも色んな家庭があり、このようにオープンな性教育ができる家庭ばかりではありません。

親自身に恥ずかしいという思いがあったり、子供からの性がらみの質問に対して、どう答えたら良いのか分からず気まずさやためらいを感じる親はドイツでも少なくありません。また「親と性の話をしたいとは思わない」と思春期の子供自身が親との会話を拒否するケースも多く見られます。

■家庭に任せきりにしないドイツの性教育

そんな時に頼りになるのが学校での性教育です。

州によって多少の違いはありますが、例えばハンブルクのStadtteilschule Wilhelmsburgという学校ではある週を「プロジェクト・ウィーク」と名付け、6年生を対象に「僕・私の身体がどう変わっていくか」「恋、愛、性欲について」「避妊と性行為」をテーマに一週間かけてじっくり教えています。

このプロジェクト・ウィークは先生がProFamiliaという若者の性教育に取り組んでいる団体で事前に講習を受けた上で行われました。

実はドイツでは学校での性教育が大事だとされていながら、先生が「生徒への性教育のしかた」について大学で学ぶ時間は限られており十分な時間が確保されていません。

そのため先生自身が性教育を行う場合、事前に前述のPro Familiaのような場でレクチャーを受けることもありますが、時間などの関係でそれがままならない場合、または先生自身に性教育をする上での自信が足りない場合などは、外部から専門家を呼び、ワークショップという形で性教育をする場合もあります。

ケルンにあるギムナジウムでは9年生(日本でいう中学3年生)の生徒たちを対象にワークショップを行いました。その期間中「避妊とセックスについて」(ドイツの性教育では「セックス」は必ず「避妊」とセットで教えられています)、緊急避妊薬について、性病の防ぎ方、LGBTや第三の性という内容のほか、「日常生活の中で自分がどこを触られたら不愉快か」「性行為の同意や拒否」についても勉強します。

■「生徒が知りたいことを全部教える」ドイツの学校の性教育

ただ勉強といっても、単に「情報として学ぶ」だけではなく、「考える能力」も問われる「参加型のスタイル」となっており、ワークショップの最後には「携帯電話を使って自分で性教育の動画を作る」というプログラムも組み込まれています。

ドイツでは生徒同士で会話をしながら性教育について学ぶ参加型のスタイルが適切だとされています。

というのも、「知識」として避妊について学んでいたとしても、避妊について「話す」訓練を受けていないと、イザというときに避妊についてパートナーに話すことを「恥ずかしい」と感じてしまい結局は避妊をしないということにつながりかねないからです。そのため話しにくいとされるテーマだからこそ、オープンに口に出し「会話をすること」も性教育の一環だとされています。

なお、最初から最後まで「生徒が知りたいことは全部教える」のがドイツ流の性教育です。

先ほど会話が重視されていると書きましたが、性的なことに関する個人的な悩みについては、生徒に各自匿名で紙に書いてもらい、専門家がその質問を皆の前で読み上げて回答する場合もあります。相談内容は性行為に対する不安だったり、自分の性器の形や大きさに対する不安だったりとさまざまです。

■性とポジティブに向き合うための教育

ドイツの性教育では「生き方」には言及しないことになっています。

仮に女の子に対して「将来子供を産むのだから自分の身体を大切にしましょう」と教えれば、遠回しにその女子生徒が将来子供を産むことを前提にしているため、女子生徒の「生き方」への口出しになってしまいます。

男の子に対して「相手の女性が妊娠したら結婚しなくてはいけない」というようなことも個人の「生き方」に踏み込むことになるので、性教育の際、専門家や先生からそういった発言はありません。

先生や専門家が「モラルを説く」のはダメで、あくまでも、生徒に性行為があることを前提に「妊娠しないための方法」「性病を防ぐための方法」を具体的に教えます。また性行為を「危険」という観点でのみ扱うのではなく、生徒が性的自己決定権を持ち自らの性とポジティブに向き合うことも性教育の目的です。

なお、ドイツで性教育は特別視されることはなく、あくまでも「一般の教育」(独語:Allgemeinerziehung)の一環としてとらえられています。

■「家庭の方針」での欠席は認められない

こういった指針のもと、ドイツで性教育というものがいかに「真剣」に考えられているかは、「家庭の方針で性教育の授業やプロジェクトを欠席することが許されていない」ということからも分かります。

ドイツには多くのイスラム教徒が住んでいますが、家庭によっては「娘に学校で性教育を受けさせたくない」と考える親もいます。しかし2004年にハンブルクの行政裁判所は「宗教上の理由から子供にドイツの学校の性教育の授業を受けないことは認められない」とし、後に連邦憲法裁判所も同様に判断しています。

理由は「性教育を受けさせても、宗教を信仰することは可能」「宗教を理由に子供にドイツの性教育を受けないのは、(ドイツ社会からの)本人の疎外につながる」ことなどが挙げられています。また2011年に欧州人権裁判所も「宗教上の理由で国(学校)の性教育を欠席することは認められない」と判断しています。

■性教育をシモネタと勘違いするニッポンの「旧世代」

話は2005年にさかのぼりますが、当時自民党の山谷えり子議員が日本の公立小学校で男女の性器の名称や受精の仕組みが書かれた性教育の本を国会で取り上げ、問題視したことがありました。

それを受けて当時の小泉純一郎首相が「これはちょっとひどいですね。(中略)性教育はわれわれの年代では教えてもらったことはありませんが、知らないうちに自然に一通りのことを覚えちゃうんですね」と回答しましたが、政治家が性教育をシモネタのようにとらえていることに筆者は心底驚きました。現に当時、国会はこの発言の後、シモネタ発言の後にありがちな笑い声に包まれました。

昨年ドイツ公共放送連盟ARDが記事の中で「日本の若者はポルノや性的なアニメなどに簡単にアクセスできるのに、学校という場で避妊や性行為については習わない」ことを疑問視し、「世界の先進国の中で、日本の性教育が一番遅れている」と書いていますが、記事の中で前述の小泉首相の発言も取り上げています。

現在も日本の性教育に大きな進歩は見られず現場は「自粛」が強いられていることを考えると、日本の政治家、特に高齢者の一部は「性教育はシモネタのようなもの」という認識のままなのかもしれません。

セクハラ、レイプ、性虐待などを防止する上で学校での性教育がもっとも大事であるのに、その認識がスポッと抜けている気がします。性教育は性的なことについて話すことなのだからとシモネタ的なこととつなげて考えてしまう短絡的な認識がニッポンの有職者の中でも少なくないのは非常に困ったことです。

■「寝た子を起こすな」と考える大人たち…子供たちは「もう起きている」

もちろん日本でも避妊方法も含む現実的な性教育をしようという声はありますが、そのたびにハードルになっているのは「寝た子を起こすな」と反論の声があがることです。

しかし今の時代、大人が子供に教えなくても、子供はインターネットを通じて簡単に性的な情報にアクセスできてしまいます。問題はインターネットに書かれた情報は必ずしも信頼できる内容のものばかりではないということです。

思春期の子供が性的な知識をネットのポルノやアダルトサイト「のみ」から仕入れ、間違った知識のまま大人になることには大きな問題があります。

ドイツでは「子供はもう起きている」という前提で、「どうせ覚えるなら、学校で正しい情報を」というのが性教育の考えの基本となっています。どのみち覚えることなら、「学校」という信頼できる場で正しい情報を教えたほうが良いというわけです。

実際に効果てきめんで、Bundeszentrale für gesundheitliche Aufklärung〔ドイツの連邦行政機関で、連邦保健省(BMG)Bundesministerium für Gesundheitの一部〕の2014年/2015年の調査によれば、若者の80%が避妊、性行為や妊娠などの性的な知識を「学校の性教育で得た」と回答しています。特に男子は避妊、性行為、妊娠などについて「学校の性教育の授業で得る知識が多かった」と回答しています。

■情報の“仕入れ先”がポルノやアダルトサイトだけで良いのか

日本では「性行為は家庭を持つまで避けるべき」という考えを示したり、若者の現実を直視せずに「ちょうちょ」の話を堂々とする山谷えり子議員のような意見が一部でまだまだ幅をきかせているので性教育に大幅な進展がみられるのはだいぶ先になるのではないでしょうか。

でも「かわいいわが子」が「学校の性教育で『起こされる』」のと、正確な知識がないまま「悪い男(女)に起こされる」のとどちらが良いと思いますか。

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サンドラ・ヘフェリン 著述家・コラムニスト
ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフ」にまつわる問題に興味を持ち、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ「ハーフを考えよう!」 著書に『ハーフが美人なんて妄想ですから‼』(中公新書ラクレ)、『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)など。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Xavier Arnau


(出典 news.nicovideo.jp)


(出典 amd.c.yimg.jp)



<このニュースへのネットの反応>

騙されてはいけない。彼らは親の権限を飛び越えて子供の監督権を委ねさせようとしている。その行き着く先は子供らに親の承諾や許可や相談など無しにコンドームや緊急避妊薬を与えようとし始める。現にユースクリニックでは親の監督権無しに独自の判断でそれと同じことが行われている。ろくでもない親のために自分の子供の保護監督権を安易に他人に委ねるようなことに賛成してはならない。


彼らは二言三言目には先進的な性教育を餌に無知な日本人を騙そうとするが、それは緊急避妊薬の市販化が目的である。性教育が中絶率を自由自在に上げたり下げたりすることなど一度たりともなかった。現に日本より進んでいるはずの性教育先進国の中絶率の高さを見よ。中絶率は出産率に比例して上がり、性交率に反比例して下がる。日本の中絶率の低さは単に性交率の低下を表しているだけだ。


エロゲとかやってると、必ずみんなオーラル*とかやってるけど、あれってリアルでも必ずやることなの?そういうのって誰も教えてくれんから*は困っちゃうよね。


もう共働きが一般化し始めている日本において家庭で性教育とかできっこないから学校に任せるしかないよね 今までも*親は教えないし 自力で性欲を発散する方法が多いからたまたま中絶率が低いだけだよ


出産率を上げたければ、その当然の結果として中絶率の上昇もある程度は認めなければならない。その観点からすれば、なぜ他の国よりもとりわけ低い日本の中絶率を取り沙汰して性教育の遅れを訴えるのか、という欺瞞に気づくだろう。出産率は上がらずに中絶率だけが上がっている悪夢のような国が、日本よりも先進的な性教育を実施しているなどと豪語しているのである。真似してはならない。


保健体育の教科書に描かれてる外*図だけ見ても機能的な説明だから、現実の個人差があって正解が無いってのが理解しにくい。かといって写真一杯載せたら猥褻だとか言われる...どうしろと?


正しい*となると子供を授かるのに最も適切な性行為と言う事になるからな。それを教えるなら簡単だ。犬でも馬でもの交尾から詳細に教えればいい。実際には、避妊や堕胎から*性欲まで、教えることは多岐に渡る。*やレズの団体も穴瑠*から*売買まで学校で教えろと言うだろう。面倒くさい話だ。


真に性教育が必要なのは子育てをしている親自身である。それなのになぜだか彼らは親ではなくその子供に施すべきだと主張する。その矛盾に気づかない限り、この問題は解決しないだろう。


またTVでモザイクとお宝マークが乱舞する番組流しまくった方がいいって言いたいのかな?


性教育を早めるほど初交年齢が早くなるそうですね(笑。


今どきAVを鵜呑みにするアホはそういないだろ


ポルノ解禁国と比べられてもなぁ


性教育できる人が誰もいねぇんだよ。受けた事ねぇんだから。学校の教師にできるワケぁねぇじゃん。


日本の性教育が臭いものに蓋をして隠す性質なのは分かるけど、ドイツでは当たり前なんだから日本もそうしないといけないという理屈はおかしい


よしならば中学生ぐらいから保健体育・性交・実技を男女混合授業で教えよう(エロ漫画脳


性教育ガー!って騒ぐわりには猥褻だ!って規制するからどこで誰が教育するの?っていう。まあ性行為そのものはともかく避妊や中絶あたりくらいはしっかり教育しないと不幸を生むだけになるとは思うがね。


純粋だったので、学校で習う時にスタートが*がいきなり子宮の入り口でこれはどうやって侵入してるんやろなって思ってた(小並感) せめて一連のプロセスは教えてもいいと思う。タブー視するあまりちぐはぐな感じになってる。


で、ドイツと日本の性犯罪率の比較は?


隠していてもおおっぴらに教えても、見境の無い所から人間は増えて行く。最大の問題点は、その手の人間は、どんな教育をしようとしても「覚える気が無いから聞かない」


性の話は猥談だって空気がある限りどうにもならねえな…。とりあえず保健体育より生物学の一環に組み込んでしまうのがいいんじゃないの。勿論人間以外の生物の繁殖方法も込みで